みなさんは、「ニューロサイエンス(神経科学)」や「脳科学」という言葉をご存知でしょうか。近未来的な響きを含み、映画やアニメの世界を想像される方もいるかと思います。
しかし脳の研究・理解は遠い未来の話ではなく、近年は研究も進み、人間の行動変革やパフォーマンス向上への貢献など、現実的な活用に注目が集まっています。
そんな「ニューロサイエンス」によって、未だ治療法のない障害・病気への医療貢献を目指しているのが、Ghoonuts株式会社 。
今回は同社代表の都志宣裕さんに、「ニューロサイエンス」に興味を持った背景から、事業内容や今後の展望について伺いました。
都志宣裕さん
Ghoonuts株式会社 代表取締役
1990年生まれ。東京農業大学応用生物科学部卒業後、会計事務所に勤務し、その後は京大発ベンチャーaceRNA Technologiesを共同創業。2020年にGhoonuts株式会社を創業。
”人の在り方”への興味に突き動され、研究、そして医療貢献へ
——「ニューロサイエンス」や「脳科学」に興味を持った背景は?
学生時代に、人間は細胞や身体を前提に生きていくのではなく、脳や意識だけで生きていくこともできるんじゃないかと思ったのがきっかけです。そう考えたのには、「攻殻機動隊」の影響もあります。
”新しい人の在り方”に関心を持ち始め、脳の研究を進めていきながら、その可能性を実際に見てみたいと思い生物化学の分野に進みました。
——創業された、Ghoonutsの事業概要を教えてください。
脳科学の研究を通して得られた成果を、医療に生かす事業をしています。
現在は脳への電気刺激を活用し、脳卒中後の「失語症治療」を行うデバイスの研究及び開発を行っています。
——脳卒中後の「失語症治療」に着目されたのはどうしてでしょうか。
もともとは、「脳刺激」によって健常者の集中力や注意力をあげるサービスを検討していました。
しかし、学生時代から癌治療など医療にも関心があり、「脳刺激」が何かの疾患に貢献できないか探していく中で、「失語症治療」が電気刺激以外では解決できない領域だと気づき、この治療に貢献していきたいと思いました。
——「脳刺激」によって、具体的にどのようなことが可能になるのでしょうか。
脳への電気刺激によって、神経細胞同士の伝達を促進することができます。
例えば、人間が何かをするとき、脳の中で神経細胞同士がやり取りをするのですが、 疲れていたりするとその伝達スピードが遅くなったりするんです。電気刺激によって、そのスピードを促進することが可能になります。
言語障害を、ある細胞が死んで繋がりが切れてしまった状態だと考えると、細胞と他の細胞をくっつける治療がリハビリとして必要になるのですが、 電気刺激によって細胞の繋がりを促進したり、太くすることができるようになります。
——「脳刺激」の技術は、すでにリハビリ等で活用されているのでしょうか。
活用され始めてはいますが、まだ限定的です。また、薬剤と同様で、どうしても脳刺激にも効く人と効かない人など、個人差があります。
私たちは、これから個人それぞれの脳波や脳の活動場所を特定する研究を続け、治療効果を最大化する脳刺激デバイスの開発をしていく予定です。
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世の中にとって新しい解決法で、誰もが心身ともに健康である世界へ
——今後の失語症治療の試験予定は?
患者さんに「脳刺激」が効くかなどの検証するための臨床研究を、大学と連携して、ここ2〜3年で実施していく予定です。
また、新しく作るデバイスは厚労省に認可をとる必要もあります。機器としての評価も来年以降、臨床研究とセットで行う予定です。デバイスができたら、実際に患者さんに使ってもらう機会づくりも考えています。
——デバイス開発を進める中で課題感はありますか。
今回のデバイスは、世の中にとって全く新しいものになるので、 安全性や有効性を示し、厚労省など行政に認めてもらう必要があります。行政との折衝がひとつの壁になると思っています。
——どのようにサービスを広げていきたいと考えていますか。
医療機器・医薬品メーカーと連携して広げていくことを考えてます。
ただ、どんな分野の企業であれ、興味を持ってもらえるのはありがたいことなので、興味・関心を持って頂ける企業さんとは積極的に話をしていきたいと考えています。
——御社の技術を通して、どのような世界を叶えていきたいと思いますか。
健常者や患者関係なく、誰もが「心身ともに健康である世界をつくる」ことを目指しています。
そのために、 認知症や統合失調症など、薬だけでは解決できない分野への手助けを探求していきたいと考えています。
また病気になってしまったあと、元の生活に戻りたくても戻れないような、もどかしい期間もあるかと思います。病気になっても、戻りたい場所に戻れるような、そんな世界を手助けできればと思っています。
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Spirete活用で、プロダクト開発や実用化が一歩前に進んだ
——SpireteのコミュニティメンバーもGhoonutsに参画していますが、どのようなサポートがありましたか?
当時ものづくりできるメンバーがおらず、実際にものづくり経験のある方に参加いただき、とても助かりました。
技術的な面での手助けはもちろん、当時進行していた健常者向けのサービス開発の際には、卸しへのコネクションを作ってもらうなど、ネットワーク面でも助けてもらえました。
——今後、どのような人材が必要だと考えていますか。
医療機器・医薬品メーカーとの繋がりのある人がいたらいいなと思っています。
大手の人材会社さんだと医療技術関係者はあまりいないので、医療関連の繋がりや経験のある方がいたら嬉しいです。
——パートナーとして、どのような企業との繋がりを求めていますか。
ライフサイエンスやディープテックに関心のある企業さんがパートナーになってくれたら、心強いと思います。
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まずはサービスローンチ、そしてさらなる新しい医療貢献へ
——今後の展望は?
まずはデバイスを作り、治験を通して有効性・安全性を確認して世の中に出すことが目下の目標です。 そのあとは、失語症以外の疾患への貢献も検討していきたいと思っています。
また「脳刺激」にこだわるわけではなく、治療に貢献できる新しい技術を発見できれば、チャレンジしていきたいとも考えています。
また、昔から関心のある”身体ではない生き方”も引き続き探求してみたいと思っています。
——ありがとうございました!
◆Ghoonuts株式会社:https://ghoonuts.com/
スタートアップスタジオSpirete(スピリート)は、大企業・大学研究機関・フリーランス・副業人材など、多種多様な専門知識や経験を組み合わせ、ゼロからのスタートアップ創出を目指すスタートアップスタジオです。 Spireteのコミュニティーに参加すると、創業前や創業初期における事業立ち上げにメンバーやサポーターとして関与することが可能です。今回ご紹介した「Ghoonuts」やその他のスタートアップ事業に参加してみたい方は、ぜひこちらからお気軽にお問い合わせ下さい!
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